7歳の侯爵夫人
門をくぐって馬車が進むと、エントランスの前にはオレリアンとダレル、そしてセイたち使用人が迎えに出ていた。
エリアスに手を取られてコンスタンスが降り立つと、オレリアンは胸に手を当て、頭を垂れた。
自分の妻と義兄にというより、公爵令息と公爵令嬢に対する姿勢だ。
コンスタンスは彼の前に進み、美しいカーテシーをする。

「今日は突然訪ねて来て申し訳ありません、侯爵様」
コンスタンスの言葉に、オレリアンは緊張した面持ちで顔を上げる。
そして、久しぶりに正面から見る妻の顔をジッと見つめた後、フッと表情を和らげた。

「良かった…。お元気そうだ」
その目は本当に安堵したように細められ、口元は微かに綻んでいる。
しかしそれは笑顔ともつかない、まるで泣き出しそうな顔に見え、コンスタンスは思わず胸を衝かれた。

(こんなに…、優しい目をした人だったのね)
王宮内や外出先で、騎士として警護に当たっている彼を見かけたことはある。
だがその時は目つき鋭く、近寄りがたい雰囲気を醸し出していたように思う。
しかしあれは、任務中の騎士の姿だったのだ。
思えば、目覚めた時に飛び込んできた彼の顔もこんな風だった。

邸内に入って周りを見回しても、コンスタンスの頭痛は起きなかった。
そして応接間に通されたコンスタンスは、兄と共に、もう一度突然訪ねた非礼を詫びた。
また、今までの自分の態度についても謝罪した。
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