秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました

１、目覚めたら彼と結婚していました

『……和、紗和……』
　遠くで誰かが私を呼んでいる。
　何度も――。
　もっと寝ていたいのに、どうして邪魔をするのか。
　放っておいてほしい。
　なのに、声は次第に大きくなる。
『紗和、頼むから目を覚ましてくれ』
　それは、よく知った青年の声。
　文句のひとつでも言ってやろうと思ったら、パッと目が覚めた。
　呼ばれていたのは夢？
　見覚えのない部屋。十二畳くらいの部屋にベッドがひとつ。大きなテレビやブラウンのソファセットも置かれているが、他にはなにもない。
　私の腕には点滴。
　なんで点滴？
　でも、ちょっと目が霞むし、ずっと硬い床で寝ていたかのように身体がかったるい感じがする。
　ここは……病院なのだろうか？
　目の前には兄の親友がいた。
　ベッドの横の椅子に腰を下ろして私の手を握りしめて眠っている。その姿を見てひどく困惑した。
　まるで恋人みたいじゃないの！
　夢で聞こえたのは彼の声だ。
「いったい……なにが？」
　思わず声を出したら、兄の親友……神崎総司がすぐに反応して目を開けた。