秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました
 彼は日本最大の総合商社である『神崎物産』の社長令息で副社長。三十一歳、独身。
 百八十二センチの長身に、王子さまのような端整な顔立ち。髪はダークブラウンの綺麗な色で額を出していて、物腰はエレガント。まさに絵に描いたような御曹司だ。
 いつも完璧な身なりの彼だが、今は髪も乱れ、疲れた顔をしている。
 かくいう私は朝倉紗和、二十九歳。
 背は百六十センチ、髪はブラウンベージュのセミロングで、目鼻立ちははっきりしている。自慢はマスカラいらずの人形のように長いまつ毛と日本人にしてはめずらしい琥珀色の瞳。
 昔は周りの子と自分の容姿が違ったからよくいじめられた。
 だから、自分が嫌いだったけれど、小学四年生の時に私より二歳くらい年上の綺麗なお姉ちゃんが『その髪もその目もとってもかわいいよ』と褒めてくれてからは徐々に『これが私』と自信を持って言えるようになった。
 現在、わけあって兄が勤務している法律事務所で働かせてもらっている。
「紗和! よかった」
 目を潤ませて喜ぶ彼を見てポカンとした。
 本当になにがあったの?


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