販売員だって恋します
21.決断の夜
大藤のマンションに帰って、由佳は大きくため息をつく。

いろいろ……いろいろありすぎた。
旅行の後片付けをしながらも、気持ちはすっきりしない。

「由佳、今お風呂をいれたから入っておいで。とにかくゆっくりしなさい。」

「うん……。ありがとう、久信さん。」
部屋着に着替えた大藤が、由佳にいつもの微笑みを向ける。

「可愛い由佳のためですから。」
じいっと大藤を見上げて、きゅうっと由佳は抱きついた。

どうしよう。
本当に大好き。

「由佳、大丈夫ですよ。きっと大丈夫だから。俺がついてます。」
「うん……」

「それとも、一緒に入る?」
んん?お風呂のことだ!と気付いて、由佳はぎゅううっと大藤の胸に顔を埋める。

「ん……入り、ます」
くすりと笑った大藤が、由佳を洗面所に連れて行く。

そして由佳を立たせて、部屋着のファスナーに手を掛けた。
それを、ゆっくりと引き下げる。
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