独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
『これから毎朝、俺より先に起きてベッドを出るのは禁止だ』――あれは彼のわがままなんかじゃない、私のためだ。

あのままがむしゃらに家事に向き合っていたら、私は近いうちに倒れていただろう。

彼はそれにいち早く気づき、私を救ってくれたのだ。

計り知れないほどの彼の優しさに、胸には熱いものが込み上げていた。

「行ってくる」

身を屈めた彼は、いつものように私にキスをした。

「はい……、いってらっしゃいませ」

私の頭を撫で、踵を返した彼の広い背中を見つめる。

やっぱり私の予感は当たっていた。

再会すればきっとまた彼を好きになる――。

彼が私を好きじゃなくても、私は彼を好きにならずにはいられない。

初恋は再び動き出し、私は密かに彼に熱い想いを寄せた。


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