エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 直後、私たちのことを見送ってくれていた母が血相を変えて駆け寄ってきて、抱き起こしてもらったことでようやく何が起こったのかを知ることになったのだが。

 事故直後の惨状を前に、呆然と立ち尽くす母の腕の中で、それを目にした私は、ショックのあまり泣くことも言葉を発することもできず、眼前で繰り広げられるドラマの中のような惨状をただただ呆然と見つめることしかできずにいた。

 そこには、見るからにぐったりとしている、その小さな優くんの身体を抱きしめたまま人目も憚らず泣き崩れている優くんのお母さんの姿があって。

 その周囲には、衝突したことにより飛び散ったと思われる、大破した車やバスの破片が散乱していて、まるでニュースなどで目にした戦場のよう。

 なかには、転倒して泣きじゃくる児童や、私と同じようにあまりのショックに呆然と見守ることしかできないでいる児童や、その児童らに駆け寄ってきた大人の姿や声、到着したばかりの緊急車両や警察車両のサイレンの音らで溢れかえっていた。
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