エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 後になって知ったことだが、その事故で、優くんを含む三名の児童の尊い命が犠牲となり、ニュースでも連日のように取り上げられていたらしい。

 あれからもう二十年近く経っていることもあり、大人となった今では、子供の頃に比べれば、その時の光景を思い出すこともなくなってきたが、交通事故の現場を目にしたり、大きな物音や大量の血を見てしまうと、今でもハッキリと蘇ってくる。

 それが血が苦手になった原因であり、トラウマでもあった。

 けれども、あの時、私のことを庇ってくれた優くんのお陰で助かったのだから、優くんのためにも、どうしても外科医になるという夢を叶えたかったのだ。

 というのも、小さい頃、人見知りの激しかった私は、クラスに馴染めずにいたのを、明るくて優しい優くんがいつも声をかけてくれて、それがきっかけでクラスにも打ち解けることができたから余計だった。

 今にして思えば、それが私にとっては初恋だったのかもしれない。

 ……だが、その事故のことがあるため、両親は、ひどく心配して、医者になることを反対していたのだ。

 でも、どうしても諦めきれなかった私は、子供の頃から可愛がってもらってた光石総合病院の院長のおじさんや副院長の小百合さんの援護射撃のお陰もあって、なんとか両親を説得し、医大を受験し見事合格を勝ち取った。

 私がひいお祖父ちゃまの主治医だった小百合さんにかねてから憧れを抱いていて、よく見学させてもらっていたこともあり、ふたりとも快く引き受けてくれたのだ。
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