今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

お迎えの車

準備を終えてようやく家の外にでると、門の前に一台の黒い車が横付けされていた。


「わ、凄い高級車だよ。翔くん見て見て」


玄関ドアの鍵をかけていた兄は振り返って車の方を見るとあからさまに嫌な顔をする。


「おはようございます。坊ちゃん」


「……」


運転席から出てきた見覚えのある男の人に深々とお辞儀をされた。


「矢代（やしろ）さん……」


「今から学校ですよね。お車へどうぞ。
お送りしますよ」


紳士的で穏やかな笑みを浮かべて後部座席のドアを開けてくれた。


彼は矢代さんといって伊集院家の執事であり翔くんの教育係だそうだ。


年齢は30代くらいでスッとした雰囲気でスーツの似合うイケメンなんだけど、翔くんはちょっと苦手だって言ってた。


物腰は柔らかくて優しそうに見えるんだけど、教育係っていうくらいだから厳しい面もあるのかもしれない。