あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
Chapter5*若君はお忍びがお好き?
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ウィスキーボンボン十三箱、シャンパントリュフが九箱、ビールチョコは二十箱。あ、柿ピーの在庫もだいぶん少ないな。

業務用携帯端末(ハンディターミナル)を片手に、わたしは売店商品のバーコードを読み込んでいた。

「本命チョコってどこで()うてはりますぅ?やっぱり百貨店ですかぁ」

「うちはいつも近所のチョコ屋さんで()うてんねん。旦那も息子もそこのんがええ()うから」

明日は日曜だから、今日発注しても納品は早くても月曜か。
今週はチョコ系のお土産がよく動いてる。来週には二月になるせいかな?
とりあえず多めに発注かけとくか。

「あ、それってベルギー王室御用達のショコラティエちゃいますかぁ?」

「そうそう、よく知ってるね。希々(のの)ちゃんはどこで買うん?」

「今度ぉ梅田のバレンタイフェアに行くんですぅ。本命チョコはやっぱり気合入れて選ばんとあきませんよねぇ」

森ちゃんよ。チョコに気合を入れる前に、仕事に気合を入れておくれ。

ていうか、グループ会社の商品がここにあるんだから、少しくらい売り上げに貢献しようという気はないのか。
このウィスキーボンボンなんて、昔ながらのやつで幅広い年代に人気があるんだけど?

心の中でそんなツッコミをしながら、「ピピッ」という機械音を鳴らしていく。

「希々ちゃんは、カレシには手作り派やのぅてお店派なんやね」

「やだぁ、坂田さぁん!今のん(・・)にカレシはいませぇん」

わたしはレジの前でパートの坂田さんと女子トークに花を咲かせている後輩に向かって声をかけた。

「ちょっと、森……。瓶ビールコーナーの発注終わったの?」

「あ!……静さんはぁ?」

「は?わたし?」

「本命は手作り派ですかぁ?のん(・・)はぁ、手作りは付き合い出して初めてのバレンタインって決めてるんですぅ」

森の言葉に坂田さんまでこちらを見る。二人にじぃっと見つめられて、思わず左足が後ろに下がる。
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