君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「いい天気でよかった」


 レースのカーテン越しに外を見て、母が微笑む。


「いよいよね。おめでとう、舞花」

「うん。ありがとう、お母さん」


 今日は、いよいよ智志くんとの挙式が執り行われる。

 式は家族だけで小さく挙げ、後日職場関係や友人たちを招いて結婚報告の席を設けることになっている。

 今日の挙式後、役所に婚姻届を出しに行く予定だ。


「舞花が結婚するなんて報告してきたときは驚いたけど……本当によかった」


 男性恐怖症になってしまった私に、母もひどく責任を感じてきた。

 自分が仕事に出ていなければ、迎えに行けていれば。そんな酷い目に遭わないで済んだのに──そう、何度も自分を責めていた。


「今まで、心配かけてごめんね」

「舞花……」

「ちゃんと結婚して、幸せになるから。安心してね」


 そんな言葉じゃ全然足りないけれど、母の目にはあっという間に涙が溜まる。


「もう、本当にお嫁に行く日のセリフで泣かせないでよ!」


 くしゃっと笑って目尻に浮かぶ涙を指で押さえ、母は「やだ、お嫁に行くんだからいいのよね」と自分にツッコミを入れた。

 椅子にかける私のそばまできた母は、そっと私の頭を抱き寄せる。


「おめでとう」


 耳元で聞こえた声は、いつもと変わらない優しく温かい声だった。

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