悪魔が気に入るお飾り人形!
※ 人形の涙とすれ違いの代償
私の魂は軽いはず。それなのに、温まってきたってどういうこと…?
たしかに私は今まで感情はあまり出なかったし、昂ぶることもなかった。でもレイさんといて、楽しいとか、この人のそばにいたいとか思うようになった。でも…

(レイさん…確か、人形にするには魂が軽くないと出来ないって……。もし魂が温まったら、人形に出来なくなるの…?私が人形にならなくなったら、私はいらなくなっちゃうの…?レイさんのそばに、いられなくなっちゃうの……?)

私の目から涙がこぼれた。
初めてここに来た日、からかわれて空から落とされたとき、涙目だ、って言われた。

でも今はそんなものじゃなくて、自分でもわかるくらい…胸が苦しくて、また一人になったらと、思えば思うほど怖くなって、涙が溢れ続けた。

(嫌……レイさんに捨てられたら嫌……優しく抱きしめられなくなったら…頭を撫でてくれなくなったら……私……)

私の代わりの女の子はいくらでもいる。レイさんのために何でもしてあげられる、私より何でもできる、つまらなくないかわいい子。
人間じゃなくたって、向こうの世界にもいるかもしれない。

(泣いてたら、悲しんでたら、きっと私を人形にするなんて出来なくなる…だいたいレイさんに抱き締められて、嬉しいなんて思うこと自体間違ってた……)

「お母さん……嫌だよ…私、レイさんに捨てられるの…。私よりいい子がレイさんと暮らしたら、私は……」

私はレイさんが帰ってくる頃まで、一人きりで泣いた。


「ただいまホタル〜!!」

ベッドに寝たきりの私。

「…?」

そう、押し殺さなきゃ……
人形になれば何も感じなくなる…。レイさんに好きな子ができるかもしれない…私はそんなの見たくはない……
魂はどうなるか分からないけど、消えてしまうならそれでもいい…どうせ私の魂は、お母さんのところには行けないんだから……

「どうしたんだよホタル〜!眠いのか?この前みたいに、可愛く無言で擦り寄ってこいよ〜!」

レイさんは寝そべる私を抱き締めて、頭を撫でてくれる。

「……。」

何も考えないように、何も感じないようにするの……捨てられたく、ない……

「…なあ、昨日の夜みたいに抱きしめてくれよ…。そしたらさ、またきっと俺、癒やされるし、魔力が満ちるから…。まだ魔力、無くす訳にいかないんだ……」

「……」

私は返さない。目をつぶって動かない…。なるべくレイさんの言葉を聞かないようにして、心を捨てるの……人形にならなくなったら嫌……

「…ホタル……」

レイさんは私を強く抱きしめ直した。

「…俺、クォーツのとこに行ってくる…!俺のせいで、お前に悪い影響が出たのかもしれない…!!」
< 19 / 29 >

この作品をシェア

pagetop