助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
Fight1:僕の時間をあげた分、対価は支払ってよね、お姉さん?
思えば、あの人……いや……あの、クソ上司との戦いは、あの日……転職のために受けた、面接から始まった。

私は、人材サービスの営業職として働くために今、面接の場に来ていた。
企業の中途採用支援を行っているのが、このパーソナルハーモニーという企業。
私はどうしても、この企業で成し遂げてみたいことがあった。

「では、高井綾香さん……弊社を志望した理由を教えていただけますか?」
「はい。私は、この街に来た時、あることに驚きました。それは、ほとんどの大人達が、俯いて歩いていることでした」
「……それで?」

しまった。唐突すぎたかな……!
面接官だという女性が引いている……。
私は、無理やり深呼吸をしてから

「もしかして、皆自分の人生が好きじゃないんじゃないかって思ったんです。やりたくない仕事、してるんじゃないかって」

と、準備をしてきたフレーズを言った。

「なるほど」

よし、納得させられたようだ。

「私はもっと上を向いて歩ける人を増やしたい。世の中色んな仕事があって、あなたを必要としてるところが他にもあるよって伝えたい。そんな仕事がしたいんです」

人材紹介会社を通じて、転職が成功したと喜んでいた友達もいた。
キャリアが描けるようになったと、本当に嬉しそうだった。
私も、そんな笑顔を創れる営業になりたいと、心から思って転職を決意した。

「ありがとうございました。今日は面接は以上になります。結果はなるべく早くお伝えします」

よし、言いたいことは全部言えた。と、思ったその時。

「ちょっと待て」

いつからいたのだろう。
スーツの男が、壁に優雅に寄りかかっていた。
男は、私をジロジロ見ながら、こう言い放った。

「そんなおとぎ話で、この仕事が勤まるって本気で思ってる?」
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