導かれて、放れられない
「でも、ちゃんと断りましたよ!」
「当たり前だね、それ」
「ですよね」
「どんな奴?」
「どんな……?
んーー?」
宙を見て考えている、桔梗。

「やっぱ、いい!
もうダメ!奴のこと考えないで?
常に俺のことだけ考えててよ!」
桔梗を自分に向かせ、頬を両手でつつみ込んだ天聖。

桔梗の目を覗き込んだ。
「天聖さん…?」
「頭の中も俺でいっぱいにして?
常に……
誰も入る隙がないくらい…」
そう言って、ゆっくり口唇を重ね貪った。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ほんとは、一目惚れなんかじゃないですよね?」
「は?どうしたの?桔梗ちゃん」
職場につき、真っ先に慶司を捕まえ問いかける、桔梗。

「私、自分が地味な女なこと自覚してるので、あり得ないことくらいわかってるんですよ」
「フッ…!
そうだよ、一目惚れってのは嘘!でも、惚れてるのはほんとだよ」
「は?」
「桔梗ちゃん、2・3年前くらいにこの下のカフェでバイトしてたよね?」
「え?あ、はい」
「その時から俺、知ってるんだよ。
でも、水田って名字だけだったけど……」
「え?」

「なかなか声かけれなくてさ、やっと勇気だそうと思ったら、辞めちゃってて……
びっくりしたよ、この前たまたまこの店で見かけて。
だから、ここで働くことにしたんだよ」
「嘘……」
「でも、彼氏いたんだね…残念だなぁ~
まっ、諦めないけどね!
ここで再会できたの、運命だと思ってるし……」

「再会、運命……」
その言葉を聞いて、桔梗は無下に断れなくなっていた。
それは桔梗と天聖にとっても、大切な言葉。

慶司の気持ちが痛い程わかるのだ。

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