導かれて、放れられない
「え?天聖さん?」

「君、もう…これ以上、止めてね。
“俺の”桔梗に話しかけるの。
これでも結構、堪えてんだから」

「は?別にいいじゃないすか~
やっと、逢えたんだから。
自分ばっか、独り占めしないで下さいよ!」
天聖の顔を覗き込む、慶司。

フッ…と笑った、天聖。
覗き込んできた慶司の胸ぐらを掴み言った。

「桔梗は俺のモノなのに、独り占めして何が悪いの?
それに、やっと逢えた運命の相手同士は俺と桔梗のこと。
“嫉妬”って醜いね。
だって今、君のこと絞め殺してやりたい位に憎くて堪らない。
あ、絞め殺しちゃっていい?
大丈夫だよ。
すぐに、地獄に落としてあげるから…!」

慶司はかなり怯えていた。
胸ぐらを掴まれたことじゃない。
天聖の恐ろしい雰囲気が、でもない。

今、天聖が言った言葉に何一つ、嘘やハッタリを感じられなかったから。
慶司は今初めて思った。

この男、只者じゃない。
関わってはいけない。
桔梗に関わってはいけない。
と━━━━━

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
車に乗り込んだ二人。
並んで座って、桔梗の頬を撫でる天聖。
「桔梗」
「はい」
「さぁ、どうしようか…?」
「え?」
「俺は今、嫉妬してる。
嫉妬に埋もれて、息苦しい」
「あ、そうですよね…ごめんなさい…
でも…私が好きなのは、天聖さんだけです」
「ほんと?」
頬を撫でていた手が、右耳に移動した。
「んん…はい」

「じゃあ…証明して?」
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