遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
気になるあの子
林部から和花を気をつけて見てほしいと頼まれて以来、秀人は和花のことを日々観察していた。

いや、本当はあの日青白い顔で震える和花を助けたときからずっと気になっていた。
怯えて泣いていた彼女。
あの時の顔が脳裏に焼きついて忘れられない。普段の和花はそんなことを微塵も感じさせないほど元気に仕事をしている。だから秀人は和花と同じグループになり話しをするようになって、ようやく彼女のことが少し紐解けてきたように感じていた。

最初のアンケートで和花が正直に“誰かと二人きりになるのが苦手”だと秀人に伝えたことも大きい。

体質的に苦手なものはいくら仕事だからとはいえ無理にやらせなくてもいいと秀人は考える。それなのに和花は自ら飛び込んでいくスタイルだ。それを浅はかだと捉えるか努力家だと捉えるか、きっと見る人によって違うのだろう。

秀人の考え方は後者だ。苦手なものを克服しようとする姿は大変にいじらしい。だが同時に心配にもなる。なぜなら秀人は和花が過呼吸になった姿を見てしまっているからだ。
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