託宣が下りました。
第二話 一体どうしてこんなことに?
 あまり大きな声では言えませんが、修道院は金欠です。
 それと言うのも、このところ、国の援助も国民からの寄付も減っているのです。

 原因は魔王と、そして国自体でした。
 我が国エバーストーンはおよそ十年の間、魔王に苦しめられました。その期間我が国に起こった変化があります。それは何かと言うなら。

 出生率の増加だったのです。

 たぶん――少し下品な物言いかもしれませんが――魔王に対する不安から、本能的に人々が子孫を求めた結果なのでしょう。子どもが本当にたくさん生まれました。もとより出生率が高い方である我が国でも、類を見ないほど生まれました。

 その結果、国は活発化――するかと思えば、残念ながら。
 国は政策に失敗したのです。

 ただし、必ずしも『情けない王族』とは言えません。
 魔王は我が国を集中的に攻めました。なんでもこの国の土地に、魔族にとっては喜ばしい何かがあったのだそうです。わたくしは詳しく存じませんが。

 エバーストーンは魔王に攻められ、おまけにその隙に他国に出し抜かれました。上手に利益を奪われ、どんどん丸裸にされてしまったのです。

 そして魔王が倒され、一年。

 国はようやく落ち着きつつあります。『魔王はもういないのだ』と人々が分かり始めた、とでも申しましょうか。前向きな風潮がそこかしこから見られるようになりました。

 元来この国は陽気な国です。貧困などなんのそのです(騎士ヴァイスを見れば分かると思います)。
 不安がうずまく一方で、それはそれとして笑おう――ここはそんな国のようです。

 さてそんな話はともかく、修道院は金欠です。

 ざっくり言うなら国は魔王の後始末に忙しく、修道院を重要視してくれてはいるものの、こちらばかり見てはいられません。

 国民は各々の生活を立て直すのに必死で、寄付どころではありません。
 けれど修道院は、就労によって金銭を得ることを伝統的に禁じています。「規則は守らねばならない」「そんなことを言っている場合ではない」と、上の方々は議会を開くたびけんけんがくがくだそうです。結論はいまだ出ません。

 だからその折衷案として――
 わたくしたちは、昔から育てている薬草たちの種類を増やし、それを売ることにしたのです。
< 14 / 459 >

この作品をシェア

pagetop