託宣が下りました。
*
「いってらっしゃい、アルテナ」
「ありがとうシェーラ」
シェーラに見送られながら、わたくしは修道院から足を踏み出しました。
午前十時。今日はまぶしいほどの晴天。空気もきれいで、遠目に望む山々がきれいに色づいているのがはっきりと見えます。
わたくしは抱えた籐のかごを抱きしめ直しました。中身は大量の薬草――。
大切な資金源。落としたりしたら大変です。
『薬草を売りに行ってほしい』と、修道長アンナ様に頼まれたのは今朝のこと。
本来はわたくしとシェーラの二人に申しつけられた仕事でした。ですがシェーラは、
『ごめん! 私今日やりたいことがあるの。一人で行ってもらえる?』
薬草は一人で十分持てる量でしたし、わたくしとしては断る理由もありません。快諾したときのシェーラのほっとしたような顔を見れば、少しはいいことをしたような気にもなります。
『今日行く店、アルテナは初めてよね? 地図を描いてあげる』
『助かるわ。……行くのが難しいところ?』
『うん、ちょっと入り組んだところだから、迷わないように気をつけて』
ざっくりとした位置を尋ねると、たしかに入り組んだことで有名な地区でした。店舗だというのにそんな場所にあっては、誰も見つけられないのではないでしょうか。
『特殊な魔術具店だからね。知る人ぞ知るでいいのよ』
そう言ったシェーラは、慌てて言い足しました。『あっ、怪しいお店じゃないのよ? だって修道院が取引するようなところだし――。安心して行ってきてね』
言われるまでもなく、アンナ様のお申し付けに危険が伴うはずもありません。わたくしは笑って『分かっているわ』と言いました。
シェーラと別れ、道中はひとり――。
人気のない修道院の周辺を離れ、活発な商業地区へと向かいます。
目的地は商業地区をさらにはずれた、王都の東の端。
王都は広いのです。地図上では気にならない距離も、実際には一時間歩く、なんてこともざらです。
わたくしはシェーラの地図を眺め、考えました。
(まだかなり歩くし、お水を一杯飲んでいこうかしら)
……そう思ってしまったのが運のツキだったのです。
「いってらっしゃい、アルテナ」
「ありがとうシェーラ」
シェーラに見送られながら、わたくしは修道院から足を踏み出しました。
午前十時。今日はまぶしいほどの晴天。空気もきれいで、遠目に望む山々がきれいに色づいているのがはっきりと見えます。
わたくしは抱えた籐のかごを抱きしめ直しました。中身は大量の薬草――。
大切な資金源。落としたりしたら大変です。
『薬草を売りに行ってほしい』と、修道長アンナ様に頼まれたのは今朝のこと。
本来はわたくしとシェーラの二人に申しつけられた仕事でした。ですがシェーラは、
『ごめん! 私今日やりたいことがあるの。一人で行ってもらえる?』
薬草は一人で十分持てる量でしたし、わたくしとしては断る理由もありません。快諾したときのシェーラのほっとしたような顔を見れば、少しはいいことをしたような気にもなります。
『今日行く店、アルテナは初めてよね? 地図を描いてあげる』
『助かるわ。……行くのが難しいところ?』
『うん、ちょっと入り組んだところだから、迷わないように気をつけて』
ざっくりとした位置を尋ねると、たしかに入り組んだことで有名な地区でした。店舗だというのにそんな場所にあっては、誰も見つけられないのではないでしょうか。
『特殊な魔術具店だからね。知る人ぞ知るでいいのよ』
そう言ったシェーラは、慌てて言い足しました。『あっ、怪しいお店じゃないのよ? だって修道院が取引するようなところだし――。安心して行ってきてね』
言われるまでもなく、アンナ様のお申し付けに危険が伴うはずもありません。わたくしは笑って『分かっているわ』と言いました。
シェーラと別れ、道中はひとり――。
人気のない修道院の周辺を離れ、活発な商業地区へと向かいます。
目的地は商業地区をさらにはずれた、王都の東の端。
王都は広いのです。地図上では気にならない距離も、実際には一時間歩く、なんてこともざらです。
わたくしはシェーラの地図を眺め、考えました。
(まだかなり歩くし、お水を一杯飲んでいこうかしら)
……そう思ってしまったのが運のツキだったのです。