ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第5話 悪魔の令嬢】

 ジークヴァルトは、目の前の光景が信じられなかった。いや、信じたくなかっただけかもしれない。

 小さな体に()()()()を山ほど背負って、そこに立っていたのは、いつか会った自身の婚約者だった。

 初めて会ったあの日も、小鬼がいくつか彼女にまとわりついていたが、父であるジークフリートが、それとなく追い払っていたのを覚えている。

 令嬢たちの間を縫って、ジークヴァルトは彼女の、リーゼロッテのもとにたどり着く。リーゼロッテの二の腕をいささか乱暴につかんだことにさえ、ジークヴァルトは気がつかなかった。

 無意識に、リーゼロッテにしがみついている異形の者を弾き飛ばすと、彼女は驚いたようにジークヴァルトの顔を見上げた。

「お前が、なぜ、ここにいる!?」

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