ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 自分でも間抜けな質問だと思ったが、それくらいしか言葉が出てこなかった。おおかた王妃の手違いで招待されたのだろう。

 いや、既婚者にも粉をかけていたくらいだ。確信犯かもしれないと、ジーグヴァルトはいまいましく思った。

 黙ったまま自分を見あげているリーゼロッテは、どこか呆けているようだった。無理もない。あれだけのものを、この細い身に背負っていたのだから。

 ジークヴァルトは、無言でリーゼロッテの膝裏をすくいあげ、軽々と抱き上げた。

 遠くから令嬢たちの歓喜の悲鳴と、すぐそばから非難じみた悲鳴があがった。当のリーゼロッテは、目は開いているが今だ放心状態で、大きな反応はない。

「リーゼロッテをどうなさるおつもりですか?」

 亜麻色の髪と水色の瞳をした令嬢が、タレ気味の目を精いっぱいつりあげて、ジークヴァルトをにらんでいた。

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