空を舞う金魚
……同窓会に行けば、渡瀬くんに会えたのだろうか。でも、十年も前のことを、渡瀬くんが覚えているとは思いにくい。千秋にとってはかけがえのない思い出だけど、渡瀬くんみたいな人気者にとっては、あれはもう過ぎ去った過去の出来事だ。会って、その認識の差を見せつけられたら、今度こそあの時から時計の針が進んだだろうか?

千秋はベッドに寝転んだ。目を閉じるとあの時の教室の様子がありありと脳裏に浮かぶ。こんな風にあの告白を噛みしめるほどに大切にしているのは千秋だけだって、もうちゃんと知っているのだ……。
< 23 / 153 >

この作品をシェア

pagetop