マリオネット★クライシス


「翔也さんたち、どうなっただろ」


次に可憐な唇がつぶやいたのは、逃走を手助けしてくれた仕事仲間の名前だった。

――絶対諦めるな。恋人んとこ、相談しに行けよ。

朝一番、マネージャーから命じられた今夜の“仕事”に動揺する彼女に事情を問いただし、協力を申し出てくれた優しい人たち。
彼らのおかげで、彼女は今、お腹を壊してスタジオのトイレにこもっている、ということになっている。

が、すでに1時間以上経過している。
マネージャーを騙しとおすのも、そろそろ限界のはず。

『あとはこっちでなんとかするから心配するな』、なんて翔也さんは言っていたけれど、今日の広告撮影はどうなったんだろう。
再撮か、もしくは代わりを立てるか……。

代役探しはそれほど難しいことではないはずだ。
主役は人気モデルの翔也であり、彼女は後ろ姿のみ映る予定だったから。

チョイ役の代わりなんて、きっとすぐに見つかる。
でも――、と憂い顔は冴えない。

仕事を放り出し、共演者やスタッフに迷惑をかけてしまった。
責任感の強い彼女にとって、それは耐えがたいことだった。

しかも、そこまでお膳立てしてもらったというのに……

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