マリオネット★クライシス

「え? それならジェイが……」

座ってていいよ、と言いかけたわたしだったけど――

「日本語の練習したいから、オレにオーダーさせて」「ユウは何にする?」
「了解。じゃ、席取っといて。あの辺がいいかな。よろしく」とか、畳みかけられてしまい。

こっちは指示されるまま、目立たない壁際の隅っこに席を確保。
腰を下ろして、はぁ一安心――


じゃなぁい!
しまった、これじゃわたしがお金払えないじゃない!

レジに並ぶジェイへ、おーいおーいって腕を振り回して合図を送ってみる……

ダメだ、アイドル並みのスマイルで手、振り返されちゃった。
まさかの確信犯?

えぇえ……くっそぅ……
本気でわたしに何も払わせない気?

――今日一日オレたちは恋人同士。遠慮しないで、もっと“彼氏”に甘えてくれていい。

う、思い出してしまった……。

サラッとさりげなく彼女扱いとか、ほんと困る。
身代わりだとわかっていても、ドキッとしちゃうじゃないの。

もはや存在自体がタラシだな、ってため息がこぼれてしまう。
そうこうする間にも、土曜のランチタイムということもあって席はどんどん埋まっていって……。
今離れたら、次に空いてる場所を見つけるのは難しそうだ。

仕方なくわたしは、再び椅子に腰を下ろした。

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