***

夢のような舞踏会が終わり、三日が経った。
フローラは馬車の車窓から流れる景色を眺めながら、あのときのことを思い出して自然とメロディーを口ずさむ。
時々音程がずれるのはご愛敬。ユーリスはちらりとフローラを盗み見てこっそり笑った。
ユーリスとのダンスはとても楽しいひと時だった。
あの後には、皇帝とも踊り、たくさんの人達から声を掛けられた。
女性からはほとんどユーリスとのことを根掘り葉掘り聞かれ困ったが、男性からはダンスの申込みが後を絶たずに五人も踊ると疲れ果ててお断りするのにも困ってしまった。
ここで粗相があっては後々まで笑い者にされるから気をつけなさいと父から言われていたので、ずっと気を張っていて相当疲れたというのが本音。物覚えが悪いので誰と話をしたかも覚えていないのだが。そこはさておき、フローラの社交界デビューは概ね成功と言えるだろう。
ユーリスはあの日からさらに表情が和らいだようで相変わらず言葉少なだけど話しやすくなった気がする。
今日も、ユーリスの設計したという図書館へ行ってみたいと言ったフローラの願いを聞き入れて連れて行ってくれることになった。
前に座るユーリスの横顔をちらりと見てフローラはふふっと微笑んだ。