劇薬博士の溺愛処方
自分ひとりが被害に遭うだけなら問題ない、けれどここは病院で、自分たちはときに生命に関わる薬剤を取り扱っている。何かが起こってからでは遅いのだ。それに。
――彼にこれ以上迷惑かけたくない。
過剰なまでに三葉を可愛がる琉の姿にいつしか疑問を持つようになっていた。一目惚れだと彼は言っていたけれど、前の恋人もショートカットの似合う薬剤師だったという先輩の言が引き金になって、思わず彼の前で癇癪を起こしてしまった。
「わたしのこと、前の彼女さんに重ねているんでしょ。見た目とカラダの相性が良ければ他の女のひとでもいいんじゃないの?」
問い詰めたところ、琉は目をまるくしたのちいけしゃあしゃあと応えたのだ。
「……たしかに三葉くんの見た目とカラダの相性はぴったりだな。オーダーメイドの家具みたいに」
わたしはあなたのオーダーメイドの家具かい!?
彼のズレた解答に三葉は顔を真っ赤にして言いはなつ。
「もういいです。少し距離をおきましょう」
「それは物理的に? それとも心理的に?」
「両方です!」