陰に埋もれし英雄に花束を
今日は、五百年以上続く平和の祭典の日である。多くの人が華やかなパレードや出店を楽しむ中、一人の女性歴史家は華やかな街から遠く離れた丘にやって来ていた。その手には、色とりどりの花でできた花束がある。

その丘には墓地があり、多くの死人が永遠の眠りについている。女性は迷うことなくお墓の奥へと進んだ。真新しいお墓が並ぶ中、一つだけ年季を感じさせる古びた墓地がある。墓石に刻まれた名前は、ひび割れがひどく読めたものではない。

女性はお墓に花束を備え、静かに手を合わせる。遠くからは賑やかな街の声が聞こえてきていた。目を開けた女性は顔を顰め、呟く。

「……誰のおかげで平和な世の中になったのか、街の人たちは何も知らないくせに……」

千年前、世界は様々なことで争っていた。この国も戦乱に巻き込まれ、多くの人が犠牲となった。しかしみんな、その運命から抗おうとはしなかった。これが運命だと諦めていたからだ。

しかし、たった一人の女性が声を上げた。その女性が声を上げたことで、人々は平和な世界を創りたいと思い、動き始めたのだ。
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