40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
彼女との、2回目の待ち合わせの日。
前の予定が押してしまい、待たせてしまうという失態をしたが、同時にチャンスも得た。

彼女が、俺を待っている間に読んでいた雑誌で特集されていたのは川越の神社。
縁結びで有名であることは、俺でも知っている知識。
そんな特集を、彼女は食い入るように見ていた。
何を見ているのかと、彼女に気づかれないように、こっそり覗いてみると、浴衣を着た女性の写真だった。
俺は、彼女の浴衣姿を瞬時に想像してみた。

恥ずかしそうに、微笑むだろうか。
それとも、とびきりの笑顔を向けてくれるだろうか。

考えただけで、胸が熱くなった。
それに、川越には縁結びの神様がいるパワースポットでもあると、記事に大きな文字で書かれている。

(決めるなら……ここだろうか……)

本当なら、もう少し距離を縮めてからの告白という流れが良いのかもしれない。
だけど、彼女にはそんな時間すら惜しいと思った。
メッセージのやり取りを重ねてきて、この仮説はより核心へと変わった。
彼女はやはり、恋愛に関する話を徹底的に避ける傾向がある……と。

昔見たアニメの話や俺の趣味の話であれば、長い時間メッセージのやりとりも付き合ってくれる。
だけど、そこに少しでも恋愛……俺の彼女への想いを匂わせる言葉を送っても、それについては一切返ってこない。
徹底的に。
まるで、そういう内容だけ、完全にブロックしているんじゃないかと思う程。

悩んでしまった結果、ついこの間……ある人に相談してみた。
友達の話だと前置きをした上で。
すると、その人からはこう返ってきた。

「むしろ嫌われたくないからなのでは?」

と。
その人曰く。
本当に恋愛対象として自分のことを見られたくない場合は、そもそもメッセージすら適当に流すケースの方が圧倒的。
だけど今回の場合は、メッセージはむしろ長く続く。
そこから推測したその人の仮説は

「恋愛の話になると逃げ越しになるってことは、そこで関係が崩れるのが嫌と考えている可能性は、十分にある」

ということだった。
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