愛してしまったので離婚してください
タクシーの中でも私たちはほとんど話をしない。
私は気まずい沈黙から目を背けるように、窓の外に見える景色の方へ視線を向けていた。


あの雪の日。
何も異常がなく、家に戻ることになった私に付き添ってくれた。
迷惑をかけるからと遠慮した私に、半ば強引に付き添ってくれた雅。

どこも特にけがをしていない私なのに、雅はがっしりと手をつないだ。
確かにまだ足元には雪がたくさん積もっている。

熱いくらいの手の雅。
無言のまま家まで私を送ると、久しぶりに家の中を見た雅は小さくため息をついていた。

きれいにしているはずだ。
他にやるべきことがなくて、いつだって家の中はぴかぴかだ。
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