2章・めざせ転移門~異世界令嬢は神隠しに会う。

雨の中マイケルは悩む

「なんとかしないと、、」

ヤオを
人買いから助けて

更に半年。

あれから、たちまち
その日暮らしのハンターに
なってしまった
マイケルは、
ヤオを抱きしめ
今は雨を凌いでいる。

『ザーーーーー、、、、』

雨季はなくとも定期的に
ウーリウ藩島に降る雨。
それが、
このところ
厄介な長雨となっていた。

「マイケルしゃん、、」

雨音を聞いていた
ヤオが、
マイケルを伺うと、
ヤオに
山で採ったコッコー実を
採集袋から出して
マイケルは、わける。

今日は、これしかない。

「やまないね雨。食べたら
いいよ、ほら、ヤオの分。
今日は『タマノオ』と
『フタモジ』を見つけたから。
この実は 全部食べていいよ。」

そう言って
マイケルもコッコー実を
口に入れた。
元世界で食べたキウイに似た味。

少し疲れがとれる。

ウーリウ藩島は、
山にも固有種の多い島で、
木の実や菌類も豊かなのが
今のマイケルには有難い。

雨で潜れない日のマイケルは、
ギルドで丘仕事を見つける様に
している。

今日は、
なるべく割のいい仕事をと
ポーションの材料ハント、
これも藩島固有といわれる
幻の植物採集を選んだ。

それでも山は海と違って
簡単には
タンパク元が狩れない。

「『タマノオ』と『フタモジ』が
漢方の韮と紅景天に似てて
良かったよ。自生してるとこに
当たりもつけやすかったもん」

今、口に入っている
コッコー実も
見た目が猿梨みたいな
もので、
すぐに食べられると分かった。

元世界の食文化的に
虫もいけるマイケルだが、
この世界では含毒率が
まだ判らない。

たまに蛇や蛙のようなモノを
見つけて
焼きたい衝動にかられるが
我慢をしている。

「今日はギルドで、聞いてみるか
食べれる爬虫類と虫類をね。」

マイケルは、採集袋を覗いて
ホッとため息を
漏らす。

「マイケルしゃん、ギルドで
ウーリ、変えれそう?なの?」

隣で地面に座るヤオが、
マイケルを見上げた。

5才になったヤオは、
歯の生え替わりで、
言葉が拙いが、
背が伸びた。

「なんとかね。これで、ヤオとこ
に、ウーリ持っていけるよ。」

『タマノオ』と『フタモジ』を
指差すマイケルが、
ヤオの巻き毛を
モフモフすると、
ヤオは嬉しそうにする。

巡礼ベッドに戻るのは
いつも夕方ギリギリ。
なるべく
ヤオを親から離すため。

ベッドは
今の懐具合では
ヤオに用意が出来ない。
それに、完全に親から離すと
本当にヤオを買った事実を、
突き付ける様で
マイケルには躊躇いも
あった。

せめて、島の子供がデューティに
出る6才までは
毒親でも、夜は帰しておきたい。

それもあと、1年。

「ヤオの魔力が多いのは、
間違いないんだよね。でも、
ちっさくて使い方がわかんない
なんて、けっこう魔法って、
条件設定があるんだね。」

本来なら、
魔力があれば暮らしが良くなる
はずでも、そうそう
簡単な話ではなかった。
その証拠に、最下層民の魔力持ち
は魔力電池扱いだ。

能力魔力は意識すれば出来るが、
他者への付加にしても、
能力意外の力は魔法を習い
行使しなければ
多い魔力を活かせないと
マイケルはルークから聞いた。

藩島の子供は
学校で習うのだとも、、

「ヤオの魔力に頼る気はないけど
ゆくゆくは、魔法を習わせて
あげたいし、っていってもなー
もう、毎日で精一杯だよっ!」

どんなに豊かな海底遺構ある
海だとしても
雨だと、魔力なしのマイケルには
ハントに潜れない上
もうウーリの余力は無いに等しい

「今のやり方は、狩猟民族と
変わらないよね、、これじゃ
その日暮らしもいいとこ。」

未だに巡礼ベッド以外に
部屋を借りる事も
出来ないのは
その日その日の
稼ぎのほとんどを
ヤオの親に渡すからだ。

「自分だけの衣食住なら、今でも
なんとかなるけど、、
かといって、生産、加工、、
どれも土地も道具もないし」

マイケルがヤオを買ったと
どんなに言っても、
海に潜る間に
ヤオの親が
連れていってしまうのだ。

「魔力があればなあ。元手なしで
職人とかできるしっ。元手なし
で売れるもの、、情報っても、
コーラルみたいに、現物を見せて
じゃないと。何かレピシとか。」

マイケル自身に、ヤオの毒両親。
ヤオと、ヤオの乳飲み子の弟。
5人分の稼ぎは
海底ハンターでは、じり貧。

いろいろ考えるマイケルに
ヤオが

「マイケルしゃん、水のむ!」

降りしきる雨を手に貯めて
マイケルに差し出した。

「ありがとう!ヤオ。」

公害がこの世界にあるのかは
マイケルには
わからないが、
雨水は大切な飲み物だ。

差し出されたちっちゃな手に
雨水が貯められているのを
マイケルは
眺める。

魔力を、貯める。

その方法も半年間
マイケルは模索していた。

「うん!ヤオの手から飲むと
雨水もおいしいから不思議!」

ちっちゃな
手のひら雨水に口を付けて飲む。

「飲み水があるのは僥倖だよ!」

マイケルもヤオに習い
雨の中、天を仰いで口を開けると
雨水が更に
マイケルの口を潤す。

「マウトブコクも、エドウィンも
ダメだった。でも、絶対なにか
あるはず!生き物には魔力を
付加出来るんだから。何かが」

マイケルは、
魔力増幅をするエドウィン窟や、
ストーンヒーリングが出来る
マウト・ブコクの石に
目を付けて
その石に付加を試みて欲しいと
ギルドで依頼をしてきた。

「藩島で奇跡を起こすスポットは
石灰石系の白い石が多いもん。
きっと、藩島がもつエネルギー
を含んで、フィルターみたいに
放出もするから、薬石みたいに
なっているんだけど、、、」

結果は否。

「魔力を弾かれるって、モケは
言ってたなあ。ガードされてる
のか、、フル?ってことか?」

どちらの石も魔力付加は
出来なかったのだ。

「あともう一押し思考のピースを
埋める何かが足りないんだよ」


『ザーーーーー。゜。゜。゜。』

降りしきる雨で、
頭を洗い始めたヤオに、

マイケルは道具袋から
『サイカチ=石鹸の木』を
出してやった。


「狩猟民族万歳だね。」
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