ロート・ブルーメ~赤花~

束の間の……

 その後は特に会話することも出来ず、タイムリミットになった。

 日葵と愁一さんが買い出しを終えて戻ってきたから。


「美桜、お待たせ」

「あ……。ううん、買い出しありがとう」

「いや、って言うかこの人は……」

 愁一さんが隆志さんに気づく。

 いぶかし気な――と言うよりは、何かを思い出そうとしている表情で見つめている。


「ああ、愁一くんだね。久しぶり。いつも紅夜が世話になっている」

 二人は会ったことがあるみたいだ。

 でも、愁一さんの様子を見ると数えるほどって程度みたいだけど。


「っあ、隆志さん。すみません、すぐに思い出せなくて」

「いや、年に一度少し会う程度だ。忘れても仕方ないよ」

 謝る愁一さんを隆志さんは笑顔で許す。


 でも年に一度って、紅夜と会うより多いんだね。

 なんとなく、非難したい気持ちになった。


「じゃあ私はそろそろ行かなくては。君……たしか美桜さんだったね。ありがとう、話せて良かった」

「……はい」

「また会ったら今度は君や紅夜のことを教えてくれ。それじゃあ」


「っ! ……はい、またいつか」

 あたしが教えるより、紅夜に会いに行ってあげて。

 そう口に出してしまいそうなのを呑み込んで、さようならの挨拶をする。
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