シングルマザー・イン・NYC

婚姻届

私たちを乗せたタクシーは、空港を出ると間もなく首都高に入った。

しばらく走ると、右手に東京湾。
前方にはレインボーブリッジ。

日は暮れ、建物の窓の明かりや、高層ビルの上で赤く瞬くライトが美しい。

「きれい」

思わず声に出した。

「そう?」

左の窓際に座っている篠田さんが、私の方を見た。
私は右側で、真ん中ではシートベルトで固定された慧がぐっすり眠っている。

「マンハッタンの方がいいだろ」

「……うーん、どうかな。それぞれに良さはあるから」

本心だ。
東京も意外といいなと、タクシーの窓に流れる景色を見て思ったのだ。

「もう少しで着く」

「もう?」

まだ二十分しか走っていないのに。

「意外と近いんだよ、港区――すみません、次の信号を右に曲がったら、すぐに停めてください。区役所の前で」

そうきいた時私は、ああそうか、区役所のそばのマンションなんだな、と思った。

しかし。
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