シングルマザー・イン・NYC
「ちょっと、起きて! 荷物とあなた、両方持つのは無理だから……! 頑張って! 慧ならできる!」

眠気でふらふらしている慧を叱咤激励し、私たちは何とか入国手続きを済ませ、手荷物を受け取り、税関を抜け、到着ロビーに出た。

「希和! 慧!」

懐かしい声がした方を見ると、ほんの数メートルの距離に、樹さんが笑顔で立っていた。

「お父さん!」

すぐそばまで近づいて、見上げる慧。

「よく来たな」

目線を合わせるために屈む樹さん。

「うん。お父さんもお迎え、ありがとう――眠い」

「機内で眠れなかったか」

樹さんは、あははと笑い、慧を抱っこした。

軽そうに持つな――まだ六歳で小さいけれど、それでも私の腕には余る大きさになっているのに――。

「すごいな、もうぐっすりだ」

肩にのる慧の顔を見た樹さんは、感心したように言い、それから私に視線を向けた。

「希和。あれから二ヵ月しか経ってないけど――すごく長かった」

「うん。私も」

再会の日を、心待ちにしていたよ。
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