天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
彼と手を取り合って

「わぁ、綺麗……」
「いつも下からは見てたけど、実際上るのは初めてだな」

 バレンタイン当日。勇悟は仕事の後に会社まで私を迎えに来ると、山下公園に隣接するマリンタワーに連れて行ってくれた。

 薄暗い照明がロマンティックな雰囲気を醸し出す展望台からは、三百六十度、横浜の夜景を見渡すことができる。今私たちがいる場所からは、みなとみらいや赤レンガ倉庫、大桟橋に寄港する大きな客船が見えた。

 私は左隣で景色を堪能する勇悟の横顔をちらっと盗み見ると、バッグに手を入れる。そして、リボンをかけて綺麗にラッピングした袋を取り出すと、勇悟に差し出した。

「はいこれ。約束してたもの」
「ありがとう。そういやずっと聞きそびれてたけど、なにを作ってくれたんだ?」
「ブラウニー。勇悟がカナダでよく食べてたって言ってたから、それに負けないくらい美味しいレシピはないかなって探して、作ってみたの。味見したけど、結構いい勝負だと思うよ」

 ブラウニーは調理工程が少なく簡単なお菓子だけれど、そのぶんいろいろなアレンジレシピがあって試作するのも楽しく、つわりを紛らわせるのにちょうどよかった。

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