幼馴染 × 社長 × スパダリ
再会


いつも通る会社からの帰り道。
夜になると風が少し冷たい季節。

道路のコンクリートも黒く冷たい感じがする。

街は街灯やネオンで明るいはずなのに、今日は暗く感じる。
すれ違う人たちが、やけに幸せそうで羨ましく感じてしまう。

私は月岡 萌絵、小さな設計事務所で事務の仕事をしている。
今年で27歳、そろそろアラサーと言われる年齢。

しかし今日、社長の小田さんが体調不良になり、会社を閉じようと思っていると相談された。
小田さんにはお世話になっており、心配をかけたくない。
笑顔で “私は大丈夫です” と返事はしたけれど、笑っている場合ではない。


私の両親は3年前に事故で亡くなっている。
そのため、家の家計はもちろん、大学生である妹の学費も私の肩に乗っている。

幸い両親が残してくれたお金で、家のローンは支払ったが、そのお金はもうすぐ底を突きそうだ。


そんな時に無職になるとは…。


しかも1週間前には、3年間も付き合っていた彼氏と別れたばっかりだ。
何の前触れもなく、一方的に別れを言われた。


『別れてくれ』


この一言で終わってしまうなんて、なんて簡単な薄っぺらい付き合いだったのだろうか。
彼にとって私はその程度のものだったのだろう。


なんだか、自分が情けない。


…最悪な気分だ…


こんな日は飲まずにはいられない。
私には会社帰りに、たまに寄るバーがある。
マスターは、お父さん位の年齢でとても居心地が良い。


誰にも教えていない秘密の場所だ。


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