幼馴染 × 社長 × スパダリ


そのバーの名前は、『be happy』

“幸せになる” そんな名前にも惹かれていた。


“…カラン、カラン…”


少し重い扉を開けると、懐かしい感じの音が鳴る。
古い木で出来ているドアはとても趣がある。
落ち着いたジャズの流れる店内は、大人の雰囲気だ。


薄暗い店内に入ると、見たことのある常連客が数名いるようだ。


マスターは私に気が付くと、笑顔を向けてくれる。


「やぁ、萌絵ちゃん、いらっしゃい…」


カウンターに座った私は、マスターに泣きつく様に話し始めた。
いつもここに来ると、他では言えない弱音を吐いてしまうのだ。


「…もう仕事も彼氏も無くして…どう生きて行けばいいの…」


マスターは無言で話を聞きながら、水割りを目の前に置いてくれる。
まん丸な氷に琥珀色のウィスキーが入っている。
その氷を指でくるくるかき混ぜて、一気にグラスを飲み干した。
何回それを繰り返したか分からない。


すると、店で何回か見たことのある男が私の話を聞いていたようだ。
突然ボソッと私に向って話し出した。


「…人生いろいろあるけど、何とかなるもんだよ…」


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