離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~

胸の中で咲き誇る花

▼胸の中で咲き誇る花

 宮古島に行ってから数か月が経ち、小鞠は二歳になった。
 そして、来月にはいよいよ黎人さんは再びアメリカへと発ってしまう。
 同じタイミングで実家への引っ越しを再び済ませる予定だ。
 小鞠は、走ったりジャンプしたりイヤイヤ期に突入したりと、毎日目まぐるしいほど元気に育っている。正直、こんな元気な時期にひとりで育てるのは不安だけど、しっかり日本で黎人さんを待っていなければ。
 今日までの約一年間、黎人さんはほとんどリモートワークで過ごして、私たちと沢山の時間を過ごしてくれた。
 最初は小鞠のやんちゃさにたじたじだった黎人さんも、今はもうしっかり“パパ”が板についている。
 私は、家事をしながら、おもちゃで遊んでいる小さな怪獣に声をかけた。
「小鞠さーん、おもちゃそれ片付けてね」
「いやっ、まだ遊んでりゅっ」
「もうお客さん来ちゃうんだから、めっ」
「いやー!」
 元気すぎて困るくらい、元気だなあ……。
 リビングに積み木とお人形を散乱させている小鞠を見て、私はハァとため息をつく。
 朝からエネルギーを削られていると、出張の準備をしていた黎人さんが、自室からひょこっと顔を出して、駄々をこねている小鞠を回収してくれた。
「小鞠、ママと約束しただろ? お客さん来るまでには片付けるって」
「いやっ、してないっ」
「堂々と言い切るなぁ……」
 黎人さんは小鞠が堂々と嘘を吐く姿に呆れながら、「約束守ろう」と言って何とかおもちゃを片付けさせてくれた。
 こういう時、サッと手助けしてくれるところが、本当に助かる。
 私はその間掃除を進めて、散らかり放題だったリビングを何とか片した。
 すると、タイミングよくインターホンが鳴って、私はすぐにカメラで人物を確認する。
『やっほー、美味しいワイン持ってきたよ』
「仁さん、お待ちしてました」
 今日は仁さんが小鞠に会いに遊びに来てくれる日。
 少し寄るだけですぐ帰ると言っていたけれど、小鞠はなぜか仁さんにとっても懐いていて、きっと仁さんを見たら大はしゃぎするだろう。
 全てのセキュリティを解除すると、数分後仁さんが部屋にやって来た。
「お邪魔しまーす。小鞠ちゃん元気かなー?」
「きゃあーっ」
「おー、めっちゃ元気だ」
 仁さんが部屋に入って来るなり、小鞠はよちよちと彼の元まで歩いていき、がしっと脚にしがみついている。
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