政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
古からの結びつき
 シンと静まり帰る室内で、ただお互いを見つめ合う時間がどれくらい流れただろうか。

 彼、庵野さんはさっき衝撃的な一言を放った後、口を開かない。もしかして私の答えを待っている?

 いや、でもあの提案になんて答えればいいの? そもそもなぜうちの事情を知ってあんな提案をしてきたのだろう。
 私にそこまでの魅力があるとは到底思えないし……。

 さっきまではただ茫然と彼を見つめていたけれど、改めてじっくりと観察をして思うのは、本当にカッコいい人だということ。

 幼い頃から母に結婚は絶対に好きな人としなさいと、口を酸っぱくして言われてきたから恋愛には奥手で、二十歳を目前にして初恋も未経験だった。

 それに女将になるという夢に向かっていたし、母の死後は目まぐるしい日々で恋愛どころではなかった。

 そんな私でも、こんなカッコいい人に見つめられたらやっぱりドキドキしてしまう。

 耐えられなくなって視線を落とした時、再び庵野さんが口を開いた。

「返事を聞かせてほしい」

「えっ?」

 返事ってさっきの〝俺と結婚して子供を~〟に対してだよね? たしかに今日は名目上お見合いってことになっているし、そういう話をされてもおかしくないのかもしれないけど、あまりに突発的すぎない?
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