あの日溺れた海は、
1.赤ペン先生
3月にしては風が冷たい日だった。
校庭で満開を迎えている桜の花びらが乱暴に散って行くのを不機嫌に眺めていた。



手に握っている携帯が映し出すトーク画面には『ごめん!今日バイトだったの忘れてた!』『わたしも予定入れちゃった。』という文字が無慈悲にも表示されていた。



『今度から部活優先でね。』と送ると、ディスプレイを落として、それから口を尖らせて外の景色を見つめた。



そう、今日は部活の日だというのに部員全員にすっぽかされたのだ。それに…。
コンテストも近いのになんで来ないのよ~。と一人で拗ねながら、乱暴に舞う桜の花びらたちを目で追った。


…窓を開けたら、桜の花びらが部室に入ってくるのかな。


頭の中で幻想的な景色を思い浮かべるとにやりと笑って窓を開けた。
ぬるい室内に、一瞬にして冷たい空気が流れる。
その冷たさが肌に刺さるとぶるぶると身震いをした。


外にはたくさんの花びら舞っているのに一向に部室内に誘われない花びらたちにまた唇を尖らすと、窓から背を向けて机に向かった。
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