みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 なんで、あんなことを言ったんだろう。
 心臓が飛び出しそうだ。
 収まる気配がない。

 大洋がわたしになんらかの好意を持ってくれていることは確かた。

 そのことはたまらなく嬉しかった。

 でも、そんな自分を戒めるもうひとりの自分も意識していた。

 やっぱり咲ちゃんの言うとおり、大洋はわたしをハメようとしているのかもしれない。

 独り者の寂しいアラサー女なら、簡単に落とせるんじゃないかと。
 そうして、後戻りできなくなってから、ゆっくりカモにしようと。

 ずいぶん回りくどいやり方だけど、なんの意図もなく好意を寄せてくれていると考えるよりはよっぽど納得できる。

 大洋はそんな人間じゃないと思いながらも、100%は否定できない気持ちもあった。

 でも……と前を行く大洋の背中を見ながら考えていた。

 もしこの花びらが降りしきる、夢の光景のような街頭の下で抱きしめられていたら、きっと。

 堕ちていただろう。

 たとえ悪い男でも構わない。
 たぶらかされてもいい。
 カモにされても本望だ、と。

 今まで、自分は臆病で慎重な人間だと考えていた。

 そんな破滅的な考えを持つこと自体、自分が自分でないようだった。
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