みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 けれど、かろうじて大洋には恋愛感情はないはず、と思えるぐらいには冷静だった。

 そこまでうぬぼれは強くない。
 彼がわたしを好きになるはずがない。

 なにしろ大洋より6歳も年上だ。
 かといって大人の女の魅力を備えているわけでもないし。
 お金を持っているわけでもない。
 大洋のような若いイケメンが好きになってくれる要素は皆無。
 どう考えても何もない。

「もう。改まってそんなこと言われたら、何かと思うじゃない」

 わたしは20cmほど背の高い大洋を見上げて言った。

 最大限努力して、好きだという気持ちを表に出さないようにあえて普通のトーンで。

「いや、あのさ……」
 大洋は少しためらった後、もう一度何か言おうとしたけれど、それ以上言葉を紡ぐことはなかった。

 そして何かを振り切るように大声で
「また、一緒に映画観ような」と言い、さっと前を向いて、先に駅に向かって歩きだした。
 
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