激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「ありがとう。霧崎さんのような人が千花の親友でいてくれて助かります」
『私こそ、千花にはたくさん助けられてます』

電話を切ると、颯真は必死に頭を働かせる。
実家には頼らないに違いない。そうなれば、彼女はどこへ行ったのだろう。


『元々、皇帝とお見合いして結婚するはずだったのはエリザベートのお姉さんだったんだ……』
『私達みたい……』


ふと、千花と行ったウィーンの博物館での彼女の横顔が脳裏をかすめた。

(まさか……!)

千花の部屋へ入ると、各私室に備え付けられている大きなクローゼットを大きく開け放つ。以前はそこに収納されていたはずのスーツケースが見当たらないことで確信を得る。

「ウィーンだ」

颯真は必ず見つけて見せると、熱い決意を胸に拳をキツく握りしめた。






< 137 / 162 >

この作品をシェア

pagetop