異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜

祖国での必然的な出逢い

 あのウィーンでの運命的な出会いと濃密な一夜を過ごしてから既に一週間が経っていた。


 総介さんから逃げるように日本に帰ってきた私はもう二度と彼と会う事はないだろう。連絡先も知らない。知っているのは九条総介と言う名前と彼の優しい声、優しい笑顔、そして彼の身体の温もりだけ。いや、少し知りすぎてしまったかもしれない。


 初めてこの人に抱かれたい、この人に触れたいという感情が芽生えた。そんな身体の奥底から湧き上がるような感情が自分の中にあるなんて思っていなかった。この感情に気づいてしまったからこそ私は勇気を出して彼に抱いてもらった。今までの私ならそんな度胸のいる事は出来なかっただろう。非日常的だったからか勇気が出たのか、抱いてもらえた事に後悔はない。けれどきっとあのまま朝まで一緒にベットの上にいたら確実に後戻りできないくらい好きになっていた。 


 総介さんは私に沢山の甘い言葉をかけてくれたがそれはきっと私だけではないような気がしてしまった。あんな素敵なホテルに泊まり、紳士的で英語もペラペラ、なす事全てがスマートで余裕のある男性だ。私を抱いている時は少しは余裕が無さそうに一瞬思えたがやっぱりどう考えても凡人の私とハイスペックな彼が釣り合う訳もない。夜が明けて朝になるとますます冷静になった。総介さんとの出会いはウィーンでの素晴らしい思い出として私は逃げるように日本に戻ってきたのだ。
 それに私には守らなきゃならない約束があるから。
< 46 / 170 >

この作品をシェア

pagetop