ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜

闇の美しきグール

 いつもより早く目を覚ました。
 朝の7時30分。まだ誰もいない学校の図書室で、昔の新聞記事や白川村について書かれている本を探す。

 新聞は一番古くて7年前までのものしか見つからなくて、村の歴史本が数冊あった。

 立ったまま、そのひとつを手に取ってページを開く。

 ーー300年ほど前、ある若者が森に住む動物たちを虐殺するという事件が起きた。

 怒った神は、彼を身の毛もよだつ狼の姿へと変え、森へと追放した。

 その姿を逆手に取り、若者は村へ降りて無差別に人々を襲った。狼になった若者は、1人の村人に撃ち殺されることとなる。

 それからと言うもの、彼の子孫は何をするというわけでもなく、森へ(ほおむ)られるようになった。


「……オオカミ」

 こんな言い伝えだったなんて、知らなかった。優希ちゃんの言う悪魔が、この狼のことなのかな。

「なにしてるの?」
「うわぁッ!」

 うしろから声をかけられて、飛び上がった拍子に本を落とした。角が足に直撃して、声も出ないほど痛い。

「ああ……ううう……」

 足の甲を押さえてうずくまっていると、本が拾い上げられた。

「……白川村の伝説? 小嶺さんが、こんなものに興味があったなんて驚きね」

 はい、と渡された本を受け取って顔を上げる。にこやかに笑う三上先生が立っていた。
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