置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
東京戻ってからホームページの準備や旅行会社への売り込みなど動きが活発になってきた。

在宅でできることはやり、外部へ出かけるときには隼人や大輔くん、梨花ちゃんと待ち合わせをして打ち合わせに向かっていった。

今日は大介くんと2人で打ち合わせに向かった。
帰り道、大介くんに誘われ食事をしてから帰ることになった。
大介くんと2人だと少し気まずい。
今の隼人との関係を言えない。けど大介くんに期待を持たせるようなことはしたくない。

「槇村さん、何食べますか?」

「そうだなぁ。海鮮丼食べたいかな」

「いいですね。じゃ、行きましょう」

居酒屋ではなく普通の食事ができるお店がいいと思った。
大介くんはチェーン店のお店に連れてってくれた。

2人で注文をすると、早速大介くんが切り出してきた。

「槇村さん、加賀美さんと付きあってるんですよね」

「え?」

「加賀美さんに謝られました」

「どういうこと?」

「年明けに槇村さんが倒れて救急車で運ばれましたよね?その1週間後くらいに仕事の後呼ばれて謝ってくれました。俺が槇村さんを好きなこともアピールしていることも知っていたのに横取りした、と。でも自分もずっと好きだったから許してほしい、と」

「加賀美くんが?」

「えぇ。頭を下げていました。それに、今の関係が悪くならないよう槇村さんとはこれからも仲間としてやっていってほしいとも言われました。自分も精一杯守るけど、それでももし何かあれば助けて欲しいって」

私の知らないところで加賀美くんが頭を下げていたなんて。
だから大介くんから最近一歩引いたような感じだったんだ。

「槇村さんのためにライバルの俺に頭を下げ、さらに自分の手で守りきれないことがあれば守って欲しいと言える加賀美さんはすごいですね。俺が奪うと思わないのか尋ねたら、もしそうなっても奪い返すって言われました。とにかく槇村さんの心身の安全が第一なんですね。凄い男です」

「そっか」

「あんなに大きな心で臨まれたら俺は降参せざるを得ませんでした。なので槇村さんの幸せを祈りたいと思ってます。槇村さんが何の憂いもなく仕事ができるようサポートしますからね」

「ありがとう」

加賀美くんがそんなことしてくれていたなんて知らなかった。

「その顔、俺がさせたかったな」

「え?」

「まぁ、いいです。食べましょう」

「あ、うん」

大介くんがなんて言ったのかよく聞こえなかったけど、作り笑いのような顔の大介くんにはこれ以上聞くことが出来なかった。
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