「あぁ!舞花、やあっと来た!」


「ごめん隼也(シュンヤ)。仕事長引いちゃって遅くなった」


「ずーっと待ってたよー……でも待てなくて飲み始めちゃったけどぉー」


「うん。知ってる。……にしても大分酔ってるね。もう呂律回ってないじゃん……あ、すみません。水一つと烏龍茶一つ」



案内してくれた店員の女性に注文すると、向かいからブーイングが飛んでくる。


あ、これはダメだ。


今日は烏龍茶だけで済ませようと思っていたのに。このベロベロに酔った感じを見るに、こりゃあ一緒にアルコールを飲まないと機嫌悪くなるやつだ。



「なにー、舞花ちゃんはお酒飲まないんですかあー?俺一人に飲ませる気ですかー?」



案の定、口を尖らせるようにぶつぶつ文句を言っている。



「わかったわかった。烏龍茶飲んだらビール頼むから」


「そうだろ?飲むよなあ?ここのビールうまいもんなあ?」


「うん。そうだね。飲もうね。それで話もちゃんと聞くからね」



酔っ払いは私の言葉を聞いて呼び出した理由を思い出したのか、「聞いてくれよー」と脱力したように身を乗り出してきた。



「なに、どうしたの。何かあったの?」



お通しの枝豆を食べながら、耳を傾ける。



「……汐音(シオネ)に振られた」



急に静かになってポツリと呟いた声に、思わず私が驚きの声を上げた。