「お前ではなく、周りが気にするんですよ」

笑って答えるところではない。呑気なアメリアを、遠巻きに観察していた騎士達が全員、手助けしたくてたまらないハラハラした表情になっていた。

その様子をちらりと確認したクラークが、眼鏡を押し上げてソファに座り直す。

「それよりお前、自分の婚約者はどうしたのです?」

尋ねられたアメリアは、質問の内容を理解するまで少し間を置いた。いよいよ騎士達が見かねた様子で、言葉を投げてくる。

「もう無理っ、あの子『もしや裏がある』と思ったけど、ただの天然っぽい!」

「ほらっ、殿下はお仕事がお忙しいんだろ?」

「確か手紙では、やりとりしているんだよな!?」

「今日は、お会いする予定がなかっただけなんだろっ?」

すっかり素の状態でいたアメリアは、ちっとも悪役令嬢っぽくない雰囲気でこくりと頷くと、自信を持ってクラークに言う。

「多分、お仕事をされている最中かと思います」

「台詞くらい自分で考えなさい。今の今まで忘れていた、みたいな顔ですね」

「ははっ、まさか」

その通りです、とアメリアは笑顔の下で思った。

美しい顔をした彼に、じーっと真意を問うように見つめられてしまった。また何か言われる前にと、慌てて話を戻すことにした。

「まぁそんなことよりもっ、ミッシェル様ですよ。さきほども言いましたけど、たびたび気落ちしている感じがするんです」