囚われて、落ちていく
それから瞬作が戻ってくる。
「兄さん、買ってきたよ」
「ん。ありがと!」
「あと兄さん、ちょっと…」
紙袋を渡した瞬作が、刹那に耳打ちする。

「…………
つむちゃん、ちょっと待っててね!」
頭をポンポンと撫で、車を降りた刹那だった。

ドアを閉めて、煙草を咥えた刹那。
「何だ?」
「店長が挨拶したいって聞かないんだ」
その刹那の煙草に、火をつけ言った瞬作。

「は?
………ったく…わかった」
瞬作と共にショップに戻った刹那。

「一条様。お疲れ様です」
「わざわざ挨拶なんて、必要ない」
「いえ、この辺のショップは一条様が管理されているのでちゃんとご挨拶を……」
店長をあまり見ることなく、外を見ていた刹那。
ガラス張りから都麦が待っている車が見える。

「………もう、いいよな。帰る」
出入口に向かい、瞬作が扉を開けた。
「はい。
あ、先程の女性は……」
「ダメだ、店長」
「は?」

「先程の女性の存在……お前の脳から削除して?」
扉の外を見ながら、答えた刹那。

「え?しかし、奥様なんですよね?
ウチの店員に、ご主人にプレゼントしたいとおっしゃっていたと聞い━━━━━!!!」
店長は思わず、言葉に詰まる。

振り返った刹那の雰囲気が恐ろしかったからだ。

「消して?
いいか?これが最後の警告。
次は、もう………わかるよな?」
「は、はい…!」

店長の返事を聞き、後ろ手に手を振って店を出た刹那だった。

「瞬作」
「わかってる。早急に伝達しておくよ」
「ん。わかってくれた?」
「もちろん。都麦ちゃんの耳に余計な事を入れないようにしないとね。
どこから兄さんの事がバレるかわかんないもんね」

車に戻りながら、二人は話す。

そしてその日の内に、刹那の結婚のことや都麦に関しての事は一切考察しないと言う暗黙のルールが作られたのだった。
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