囚われて、落ちていく
「………捕まえたところで、すぐに釈放だ。
お前達はいつも、死体(証拠)を跡形もなく消去するからな」

「まぁ、お前も俺を非難できない。
自分の利益の為に、愛孫を利用したんだからな」
刹那は長谷部から、全く目を反らさずジッと見据えている。
刹那の部下が書類の束を長谷部に見せた。
長谷部はそれを見て、刹那と武之助から目を反らした。

「かなりの金がお前に流れてるんだな」
刹那が煙草を吸いだした。
「いつの間にこんなに……」
「お前の可愛い愛孫が、教えてくれた」

「……………クソッ!!!
………安心しろ…!一花組に逆らうつもりはない」
長谷部はその書類を握りつぶし言ったのだった。

「美波が一番、可哀想な女だったな」
「は?」
「信じてた祖父や執事、俺にまで利用されて結局消される運命だったんだから」

「は?笹原?」
「あぁ……
笹原はな、一花組の人間だ」
「え!?なんだって!!?」
「お前の弱みを握る為に、親父がおくったんだ」

「じゃあなぜ、美波を止めてくれなかった!?
お前が笹原に言って美波を止めれば、美波は死なずに済んだし、お前も正体を知られずに済んだのではないのか!!?」
長谷部が、声を荒らげる。

そうなのだ。
笹原は優秀な執事。
笹原なら、美波を止めることができたはずなのだ。

「最近、隠しきれなくなってきたからだ。
ほっといても、近い内に都麦に俺の事を知られるとわかっていた。
それに美波なら、俺の警告を無視して絶対都麦に接触するのもわかっていた。
アイツは、警視総監の孫ってのにあぐらをかいていたからなぁ。
だから、利用させてもらった。
いずれ美波を消し去ろうとも思っていたし、一石二鳥だと思ってな」

刹那は最初から、そのつもりで美波と接触していたのだ。長谷部の言うことを聞いているように見せかけて、結局自分の思い通りに動かしていた。

そして都麦が、自分から放れられないのもわかっていたのだ。真実を知っても、自分の傍に居続けるだろうと。
だから、美波をつかってバラさせたのだ。


「本当、お前は最低で最高な“魔王”だな」

「あぁ、ありがと」



周りの人間を動かし、全て刹那の思い通りにする。


これが最大の裏組織、一花組若頭・一条 刹那なのだ。


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