小さな願いのセレナーデ
「三年ぐらい前から、お兄ちゃん雰囲気変わったから。何か妙に落ち込んでた時期あって、あの時期に恋人と別れたんじゃないかな?って思ってた」
「そうなの」
「お兄ちゃん何て呼ばれてたか知ってる?マッキナよ」
機械(マッキナ)…」
「ホントに機械みたいな人だったんだよね」

機械。自分の昂志さんのイメージは、激しい感情は出さない、穏やかな人っていう感じだ。
だから、機械と言われると……何か印象と違うかなぁとも思う。


「ねえ、瑛実ちゃん。私のこと嫌じゃない?」
「何が?」
「勝手にお兄さんの子供産んでたって…」
「むしろありがたいよ」
「何で?」
「お兄ちゃんは結婚できないと思ってたの。子供持つなんて絶望的だった」
「そうなの?」
「親がいくら縁談持ってきても、聞く耳持たなくて。結局仕事でお父様負かせて社長職を引退に追いやったぐらい」
「えっ……」

深くは聞けないが、よっぽど彼は結婚したくなくて──それで父親に勝って社長になったと。
何だか異次元の話のようだ。
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