今、目の前に座った男性は、深く頭を下げている。自分はただ、真っ直ぐな黒髪が垂れ下がって、揺れ動く様子を眺めていた。


さっき彼が取り出したいくつかのものが、テーブルに並べられている。

まずは彼の名刺。
肩書きは、こう記されている。
『株式会社ホテルソーリスオルトス代表取締役社長 兼 株式会社ラークビレッジ最高責任者』と。


正直面会を申し込まれた時は、ホテルの演奏会関係の話だろうと。たまにうちの生徒達がソーリスオルトス系列のラウンジで演奏会を行わせていただいているので、そこで何かあったのかと身構えた。
私を指名してくるということは、うちの門下生が何かやらかしたのかと、非常に焦り心配した。


だけど、彼の自己紹介と共に渡されたのは、数枚の写真。
彼の幼い頃の写真と、成長途中の写真が数枚。
それと、私の教え子と映っている写真がある。
写真の中の二人は、仲良く肩を寄せあっていた。


──その教え子の彼女は、二年前に一人で子供を産んだ。
彼女は誰にも、子供の父親について語らなかった。

そして彼はその子の父親は自分なのだと、目の前でそう言い切って頭を下げた。
「今まで申し訳ございません」と謝罪も述べて。