小さな願いのセレナーデ
……いや、多分私の知らない所では動いているのかも知れないけれど。
いつも日曜日のレッスン後は、家政婦のユキさんに子供の碧維の面倒を頼んで、二人で出掛けてはいるらしい。恐らく近くにある、うちのホテルに連れ込んでいるんだと思われる。


でも六時には私も碧維も一緒に、四人で揃って食事をするが、食事の後は晶葉先生と碧維は二人で帰っていく。
そもそも碧維もお兄ちゃんの子なんだし、二人はここに居ることに遠慮する必要はあるのだろうか。


いや……思えば充分あるわと。

私か。
私が居るから、だろうか。

私はお兄ちゃんに面倒を見られている立場。
だから晶葉先生にとって……いや、お兄ちゃんと碧維の三人にとって、一番の邪魔者は私なんじゃないか。そう思い始めていた。





これはその昔々の、とある家族の物語。

あるところに仕事に命をかけてる女性がいました。女性は世界を飛び回る国際弁護士として活躍し、その仕事を誇りに思っていました。
だけれど三十歳半ばになった彼女は、ふと魔が差しました。このまま独り身でいいのだろうかと。そして勢いのまま、パーティーで出会った人と結婚しました。その人は、ホテル王と言われるホテル会社の社長でした。その人は再婚で既に子供がいるので、女性は好きに仕事をして良いという契約で結婚しました。
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